March 25,2007
3月23日『中国時報』楽生院カトリック教会Luis Gutheinz神父(谷寒松神父)の投書について
私は、かつて楽生院を訪れて入所者のみなさんに出会い、そこで身体の不自由をものともせずに自分たちの家を守り、人権のために闘おうとしている人びとの姿に胸を打たれました。台湾の新聞に掲載されたという楽生院カトリック教会のLuis Gutheinz神父の投書について、ハンセン病問題に携わってきた聖職者の一人として、いくつか申し上げておきたいことがあります。
まず、これまで長年、異郷の地において奉仕活動に取り組んでこられた神父の姿勢に敬意を表したいとも思います。しかし、台湾においては日本の植民地支配下から戦後現在に至るまで、国によってハンセン病に対する差別・偏見が作り出され、「公共の福祉」とか「共通善」の名目で排除と隔離を正当化されつづけてきました。私たち日本のカトリック教会も、そのことを当然のこと、仕方がないこととの認識しかもてなかったために、甚大な人権侵害をもたらす結果となってしまいました。
その反省を踏まえて、今回の一連の出来事の中で首相による「重要な公共事業のために少数の犠牲は仕方がない」との発言には、憤りを禁じえませんし、これは到底容認できるものではありません。神父は「移転に従わないごく一部の入所者は神への感謝の念を欠いており、多くの市民に交通の不便を強いている」と述べておられますが、国家や地方行政の都合で犠牲者を作り出すことは、あってはならないし、決して正当化されることではないからです。一人ひとりの人間を尊重していく立場から、楽生院の入所者の声や主張を受け止めることを出発点として「公共の福祉」は考えるべきです。
聖書には、王が代替地を用意して庶民の土地を譲ってもらうよう交渉する物語があります(列王記上21章)。結局は相手を殺してその土地を奪うのですが、聖書の描く神はその行為を断罪しています。土地は権力者や為政者の所有物でもなければ、勝手に意のままにすることのできるものではないのです。土地は神のものなので、人間が売買したりもちろん他者の土地を奪ったりしてはならないという考えです。すなわち、土地は神から一人一人に与えられたもので、つまりは「生存権の保障」を表しているのです。したがって、現代社会ではあらゆる人の生存権を保障するのが国家の役割であることを強く訴えます。
一人の聖職者として、楽生院入所者の声に耳を傾けるべきであり、今の場所で生活したいという意思を「公共の利益」の名のもとに踏みにじることがあってはならないと考えます。強制退去と新病棟への移住を強いることは再び排除と隔離が繰り返されることに他なりません。
最後に、直ちに入所者の意向にそった形で強制退去を中止し、生存権を具体的に保障するために、現在の楽生院での居住権を認めることを台湾政府に対して呼びかけます。
2007年3月24日
カトリック神父 浜崎眞実
その反省を踏まえて、今回の一連の出来事の中で首相による「重要な公共事業のために少数の犠牲は仕方がない」との発言には、憤りを禁じえませんし、これは到底容認できるものではありません。神父は「移転に従わないごく一部の入所者は神への感謝の念を欠いており、多くの市民に交通の不便を強いている」と述べておられますが、国家や地方行政の都合で犠牲者を作り出すことは、あってはならないし、決して正当化されることではないからです。一人ひとりの人間を尊重していく立場から、楽生院の入所者の声や主張を受け止めることを出発点として「公共の福祉」は考えるべきです。
聖書には、王が代替地を用意して庶民の土地を譲ってもらうよう交渉する物語があります(列王記上21章)。結局は相手を殺してその土地を奪うのですが、聖書の描く神はその行為を断罪しています。土地は権力者や為政者の所有物でもなければ、勝手に意のままにすることのできるものではないのです。土地は神のものなので、人間が売買したりもちろん他者の土地を奪ったりしてはならないという考えです。すなわち、土地は神から一人一人に与えられたもので、つまりは「生存権の保障」を表しているのです。したがって、現代社会ではあらゆる人の生存権を保障するのが国家の役割であることを強く訴えます。
一人の聖職者として、楽生院入所者の声に耳を傾けるべきであり、今の場所で生活したいという意思を「公共の利益」の名のもとに踏みにじることがあってはならないと考えます。強制退去と新病棟への移住を強いることは再び排除と隔離が繰り返されることに他なりません。
最後に、直ちに入所者の意向にそった形で強制退去を中止し、生存権を具体的に保障するために、現在の楽生院での居住権を認めることを台湾政府に対して呼びかけます。
2007年3月24日
カトリック神父 浜崎眞実
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